タイムトラベラー・キス
まだ自分の身に起こったこと、起こりそうだったことが実感できなくて、ショックは感じなかった。
ただ高校生の時から私を守ってくれようとしてくれる野々村くんの愛が嬉しくて、涙がこみ上げる。
野々村くんは全員のスマホを無理やり奪って、カメラのチェックをしていた。特に問題のないことを知り、彼らにスマホを返すと、竜見くんと私のところに近づく。
「俺たち晃が面白いことやってるっていうから、ついつい悪乗りしちゃったんだよ!盗撮なんてするつもりなかったから!都宮、ごめんなさい!」
そう言って三人は逃げるように帰っていった。
竜見くんはバツが悪そうにしていて、どちらの顔も見ようとはしない。
野々村くんはそんな彼を、すごい剣幕で睨んでいる。
「……お前、自分が何したのか分かってんのか」
「別に。俺は悪いと思ってないよ。雫ちゃんだって喜んでたし」
「なんでそんなこと……都宮の前で言えんだよ!」
野々村くんは竜見くんの胸倉をつかみ、空いている手で彼を殴ろうとした。
……しかし、その腕は空中で止まる。
「……殴る価値もねぇ」