タイムトラベラー・キス
野々村くんは竜見くんから離れ、今度は私の腕とカバンを掴み、早歩きで引っ張っていく。
「早く行くぞ」
私はどっちにも何も言えないまま、野々村くんの背中を追いかけた。
真っ白なユニフォームはところどころ泥で汚れている。
本当に部活の途中で来てくれたんだね。
もし、野々村くんが来てくれなかったらと思うと……ぞっとする。
野々村くんは何もしゃべらず、私を保健室へと連れて行った。
扉をトントンとノックしてから入る。
「失礼します」
「あら、野々村くん。部活でけがでもした?」
保健室にいたのは白井先生という、若い20代の女性だった。
そういえば、こんな先生もいたなぁ。
「いえ、この子がちょっと気分が悪いみたいなんで、少し休ませてあげても大丈夫ですか。しばらくしたら俺が送るんで」
「分かったわ、ベッドも空いてるし、横になるといいよ。さあ、こっちに来なさい」
私は野々村くんと先生の言うとおりに、ベッドに横になることにした。
……確かに、今は頭が混乱しているし落ち着きたいかも。