タイムトラベラー・キス

「先生、ありがとうございました」


「はい、気を付けてねー」


白井先生にあいさつをして、私たちは下駄箱へと向かった。
いつの間にか外はもう暗くなっていて、練習を終えている部活もある。
……野球部のメンバーと鉢合わせたらどうしよう。


「野々村くん、野球部の練習はもう終わっているの?」


「いや、たぶんあと30分くらいはあるかな。……あと俺、チャリ通だけどいい?」


「え?ああ、いいんじゃない?」


質問の意味があまり分からなかったが、いざ野々村くんが駐輪場から自転車を出したところでその意味が分かった。


「後ろ乗って」


自転車の二人乗り、か。そういえば、昔たまに自転車の後ろに乗せてもらったっけ。
大人になってから全く無くなったけど。


「お、重いよ?」


「いいから早く乗れって」


緊張する心を抑えながら、自転車の荷台に、横向きに座った。

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