タイムトラベラー・キス
「……でもさ、俺なんかと映画観に行っても大丈夫なのかよ」
再び自転車を走らせ、いつも通りの低い声でそう呟いた。
確かに、私はいま竜見くんと付き合っている。野々村くんは彼の友達。
そのような関係性で、普通なら私たちが映画に行くのは間違っているだろう。
でも、あんなことがあったんだし。
もう私と竜見くんの関係は破綻しているようなものだ。
「大丈夫だよ」
「……そっか。お前がいいなら俺も大丈夫。じゃあ、ゴールデンウィークでヒマな日はある?」
「私は特に予定はないから、野々村くんに合わせるよ」
お互いの予定を確認しているうちに、あっという間に私の家に到着した。
結構な距離を自転車で走っているのに、野々村くんは汗一つかいていない。
私は自転車を降り、野々村くんはかごに入っていた私のカバンを手渡してくれた。