タイムトラベラー・キス
未来に向けて。
先輩に呼び出されたことよりも、野々村くんの”諦める”宣言が堪えて体に力が入らなくなった。
ふらふらと教室に戻った時には、昼休みの時間は終わりかけていた。
「雫!大丈夫だった?」
理子は私の姿を見るや否やすぐに駆けつけてくれた。
「うん……なんとか」
無理やり笑って見せたけど、理子の曇った表情は全く変わらない。
「そんな真っ赤な目して、大丈夫な訳ないじゃん」
「そうだね。でも、野々村くんが助けに来てくれたから大丈夫だったよ。理子が話に行ってくれたんだよね?ありがとう」
「ごめんな、勝手なことして……でもいてもたってもいられなくて。そして、助けを求めに行ったのは野々村じゃなくて竜見だったんだけどね。あいつ、雫を心配する素振りすらなかった」
理子は、端的に竜見くんに話をしに行った時のことを話してくれた。
竜見くんは”他の男と遊びに行っていたほうが悪いんじゃないの”と言っていたこと。
それを聞いた野々村くんが激怒して、”お前は本当のクズだな”と言って、教室を飛び出していったこと。
野々村くんにそういわれた時の竜見くんは、ひどく傷ついていた顔をしていたこと。