タイムトラベラー・キス

「……都宮さん、どうしたの?」


気がつくと、先生は教科書を持ったまま私の席まで来ていた。
名前を呼ばれて初めて、自分が大粒の涙を流していたことに気づく。


教科書やノートににじんでいく涙がこぼれるたびに、思い出も消えていくような気がして怖くなる。


「都宮さん、保健室に行きますか?」


「はい、すいません……」


涙を簡単にぬぐい、先生の言われた通りに保健室に向かった。
保健室までの廊下を歩くと、ふと野々村くんの大きな背中を思い出した。


そういえばゴールデンウィーク前、野々村くんが保健室まで連れてきてくれたよね。
私のピンチの時にはいつも助けにきてくれて、まるでおとぎ話の王子様みたいだ。






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