タイムトラベラー・キス

「……ダメダメ!せっかくきれいにメイクしたのに」


親のことを想って涙が出そうになったけど、必死で我慢をする。
気合を入れてメイクをしたんだから、彼に会うまでは崩してはいけないよね。


……約束の時間が近づき、私は巾着を持って、1階まで下りた。
お母さんに一言挨拶をして、下駄をはいて外に出る。


今日は、家の近くにあるコンビニで、野々村くんと待ち合わせをしていた。
待ち合わせの時間は16時半。キスの時間までは残り90分となった。



コンビニに入ると、すでに野々村くんは到着していて、雑誌を立ち読みしていた。


「野々村くん、お待たせ」


「いや、俺も今来たところ……って、お前……」


「浴衣着てみたんだけど、どう……かな?」


野々村くんには浴衣を着ていくことは秘密にしていた。
野々村くんはTシャツにジーンズというカジュアルな格好をしている。


「どうって……可愛いに決まってんだろ」
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