タイムトラベラー・キス
「都宮……どうした?」
野々村くんは私の手をぎゅっと握ってくれた。
私も想いをこめてぎゅっと握り返す。
どうしよう、なんて切り出せばいいのだろう。
手を繋いだところで、すぐキスまで結びつかない。
18時のタイミングでキスをしないといけないのというのも非常に難しい。
まだ付き合ってもいないのに、どうすればいいのだろう。
祭りに行ったらなんとかなる、と思っていた私の考えは軽率だった。
今更ながら、もっと計画的に事を運べばよかったと後悔する。
「……都宮?」
野々村くんは穏やかな声で、沈黙したままの私の名前を呼ぶ。
……もう、ちゃんとお願いするしかないのかな。
「野々村くん、あのね。18時になったら私に……キスしてほしいの」
「……はっ?」
もう辺りは真っ暗だけど、野々村くんがゆでたこみたいに赤くなっていることははっきりと分かった。
……そうだよね、いきなりキスしてだなんて、唐突すぎるよね。