タイムトラベラー・キス
「ねぇ、野々村くん」
「何?」
「……いつから私のことを好きでいてくれたの?」
「……お前、さっきからなんなんだよ」
「いいから、教えてほしいの」
野々村くんの顔はふたたび赤く染めあがる。
りんご飴のように真っ赤かもしれない。
「……高校の入学式で、掲示板に貼ってあった名簿を見てたらさ、女子が”男子なのに雪って名前の人がいる”って、面白がってた。まさか近くに本人がいるとも思わずにさ。……そしたら、ある女子が言ったんだよ。”何がおかしいの?とってもきれいな名前でしょ”って」
「あっ……」
「俺自身、自分の名前が嫌いだった。昔からからかわれてたからさ。でも……初めて”キレイな名前”って言われて、嬉しかった。これが、俺がお前を好きになったきっかけ」
私にとっては些細な出来事で完全に忘れていたけど、野々村くんにとっては自分のコンプレックスを肯定してくれた出来事だったようだ。
まさか、そんなきっかけだったなんて、思いもしなかった。