タイムトラベラー・キス
この会話の中で、私は初めて7月7日が記念日ということを知った。
何の記念日かは分からないけど、付き合った日なのだろうか。
「あの……17時過ぎくらいには帰って来れないの?」
「それは厳しいな。18時過ぎに到着する飛行機に乗って帰るから」
「そ、そっか……」
未来の私も、まさかこの展開は予期していなかっただろう。
土曜日でしかも記念日という好条件の日に、雪が遠くに行ってしまっているなんて。
……18時までに帰ってきてもらって、キスしてもらわないと本当に困る。
でも、そんなこと言えないし、仕事なんだからどうしようもない。
頭の中がパニックになって、箸も全く進まず、いったん箸置きの上に置いた。
「それは……雪がいかないとダメなんだよね?」
「俺が主担当の案件だから……本当にごめんな。記念日なのに、寂しい思いをさせて……」
本当に申し訳なさそうにしている雪の顔を見たら、もう何も言えなくなる。