タイムトラベラー・キス
「ありがとう、私こそごめんね、ごめん……」
「そんなに泣くなよ……俺が悪かったから、許して」
涙が止まらない私を雪は優しく包み込んだ。
雪の体は、彼の心とおんなじくらいにあったかい。
「雪……スーツが涙で濡れちゃうよ」
「すぐ乾くよ。鼻水がついたら洗わないとな」
「ふふ……それは大変」
私は雪の体から離れ、涙を拭いて、雪に精一杯の笑顔を向けた。
「ご飯食べようか」
「そうだな」
……雪と一緒にご飯を食べることが当たり前の未来。
過去に戻って10年の時が経ったら、またこの生活をすることが出来るのだろうか。
自分の行動がきっかけで未来が壊れてしまうかもしれないと思うと怖い。
未来が変わってしまうかもしれないと思うと、過去に帰るのが怖い。
そう思えるほど、私の中で野々村雪は、かけがえのない人になっていた。