タイムトラベラー・キス
はっきりとそう言い切った後、雪は反応に困ったのか、しばらく沈黙を続けた。
雪の気持ちは私にもわかるよ。普通、信じられないもの。


「それでね、タイムトラベルのきっかけが、決まった時間にキスをすることなの。私が過去に戻らないといけない日は、7月7日の18時なんだ」


「7月7日の……18時……」


「そうなの、だからどうしても、明日の18時には雪と一緒に過ごしたかったんだ……」


「……そう簡単に信じられる話じゃないけど、明日18時にキス出来なかったらどうなるんだよ」


核心を突く雪の質問に、私の言葉は詰まってしまった。
そのことを一番伝えないといけないのに、伝えるのが怖い。

スマホを握る手の力が自然と強くなる。



「私はどうしても、過去に帰らないといけないの。だから……他の誰かとキスをするしかない」


「ほ、他の誰かって……誰だよ」


雪の口調が荒くなっている。
絶対怒るよね、そうに決まってる。
……でも私はもう、雪に隠し事はしたくないんだ。



「……竜見くんと会う約束をした」
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