タイムトラベラー・キス

雪は、私の話が正しいかどうか、薬を作った張本人に確かめていたようだ。
理子の話によると、雪はとても冷静に話を聞いていたらしい。


「野々村はきっと分かってくれる。大丈夫だから。だから今は、過去に戻ることだけ考えて」


「うん……」


理子にそう言われて、少しだけ心が軽くなった気がする。
彼女ならきっと、未来の私と雪の関係を支えてくれると思う。


理子は、全てを話した私のことを全く責めなかった。
本当は”間違っている”って言いたかったと思うけど、それを口にしない優しさが身に染みる。


「とりあえず、どこかお店に行くにしても、キス出来そうな雰囲気のところにしよう」


「……そんなところ、あるかなぁ」


「まぁ竜見も何かしら考えていると思うし、彼の選ぶお店でもいいかもね。……そろそろ17時になるから、待ち合わせの場所に向かって。私も二人が見える所にいるからさ」


「うん!……本当にいろいろ、ありがとう、理子」


未来の理子とも今日でお別れだと思うと寂しくて、別れ際にすっと手を差し出した。


「過去の私によろしくな!」


理子は悪戯っぽく笑って、その手を優しく握り返してくれた。
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