タイムトラベラー・キス
「竜見くん、やっぱり私、部屋には入れないよ……」
「じゃあ、まずは一緒にレストランに行けばいいよ。それかバーにでも行こうか。きっと夜景が綺麗に見えるだろうから」
「うん、じゃあそれで」
竜見くんは私の肩を抱いたまま、ホテルの中へと入っていく。
フロントを通り過ぎ、真っ直ぐにエレベーターへと向かう。
……竜見くんは本当に、そのままレストランへと向かうのだろうか。
ゴールデンウィークの時、車の中で彼は何もしないと言いつつ、私に手を出そうとした。
レストランで食事をして、そのまま帰してくれる保証なんてないのに、このままついて行ってもいいの……?
あの豪華なエレベーターに乗ってしまったら、もう後戻りができない気がする。
どうしよう、まだ決めかねてる。
もう竜見くんに頼るしかないのに……私は……
やっぱり、雪に会いたい。
「………待って!」