タイムトラベラー・キス
突然、フロントに響き渡る男性の声。
……あまりに聞き覚えのある声で、耳にしただけで涙がこぼれそうになる。
「……それ以上いくな!雫!」
後ろを振り向くと、そこには、遠くにいるはずの彼の姿があった。
「雪!どうして……」
「雪ちゃん……」
竜見くんの手が、すっと私から離れていく。
雪は人の目も気にせずに、走ってこちらへと近づいてくる。
「晃、もう俺の大事な人に近づくな」
「……雪ちゃんは、いつも雫ちゃんのことばっかだね。いいよ、もう二人でどっか行ってよ」
「言われなくてもそうするから」
雪は私の腕を強く掴み、急ぎ足でホテルを後にした。