タイムトラベラー・キス
そのままホテルを出ると、入口で待っていた理子と鉢合わせる。
「……これで、一件落着だね」
「理子……いろいろとありがとう。また10年後に!」
簡単に理子に最後の挨拶をして、ホテルを後にした。
雪はしばらく無言で、私を引っ張ったまま、しばらく歩き続けていた。
時計の針は17時30分を回っていて、期限まで残り30分を切っていた。
ふと野々村くんが足を止めた所は、高層ビル街の中にある小さな公園だった。
二人でベンチに座ると、雪は大きい溜息をついた。
「はぁ、間に合った……」
シャツにスラックス姿の雪の額には汗がびっしりで、急いでここまで来てくれたことが分かった。
「でも、18時には飛行機に乗ってたはずじゃ……」
「適当なウソ言って、同僚に任せて急いで帰ってきた」
「えっ、どうしよう、迷惑かけて本当にごめん」
「……お前だって、迷惑かけられたほうだろ?」