タイムトラベラー・キス
ただいま。

――懐かしい唇の感触がした。

ふと、目を開けると、そこには愛しい婚約者の姿があった。
坊主姿ではない、大人の野々村くん。
久しぶりに見てもやっぱりカッコいい。


「……おかえり」


「ただいま。……って、えっ?」


野々村くんの第一声はまったく予期せぬものだった。


「野々村くん、おかえりってどういう……」


「17才のお前は、ちゃんと雪って呼んでたよ」


「え?……もしかして、ばれてる?」


「ああ、全て、な」


まさか、野々村くんに全てばれているなんて予想もしていなかった。
全身の血の気が引く、とはこういうことを言うのかもしれない。


野々村くんは真顔でまったく感情が読み取れない。
笑っていないことだけは分かるけど。


「野々村くん、怒ってる?」


「んー、怒ってるというより、いまはほっとしてる。いろいろとあったから」


……いろいろとあったって、入れ替わっている間に何があったというの?!
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