タイムトラベラー・キス
平常心を装って「うんそうだね」って言ったけど。
野々村とひとつのベッドで一緒に寝るなんて、想像もできないよ。

どうしよう、”寝る”って言ったのに手を出されそうになったら……。
拒否しないでね、って未来の私は言うけれど、そんなの無理に決まってる。

とりあえず、今日は私は疲れているお姫様ってことになっているし、それを理由にして断っても不自然じゃないよね。


……最悪の場合の解決策を思いついたところで、私も歯を磨きはじめた。



私が歯を磨き終わった頃には、野々村はすでにベッドの中に入っていた。
どうやら野々村は壁側の枕を使っているようだ。


一歩一歩、野々村のいるベッドへと近づく。
ブラウンのベッドカバーとあたたかいオレンジ色の照明が独特の空間を演出している。
高校生の私が入り込んだことのない大人の空間……。


……意を決して、私もベッドの上に横になる。
どうしたらいいか分からなくて、うつ伏せになってスマホをいじる振りをした。







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