タイムトラベラー・キス
あれ、竜見くんいない……?
好きな人のことはどこにいたってすぐ分かるのに、教室内に彼らしい人物はいない。

トイレかな?
私は目線を下方に移し、机に彼のカバンがあるか確かめる。


「晃なら、クラス委員やることになって、早速担任と職員室行ったぜ」


そんな私に話しかけてきたのは、去年同じクラスだった野々村雪だった。雪という儚そうな名前とはかけ離れた、背が高く肩幅の広い男子である。

そして私は、この男が嫌いだ。


「の、野々村くんには聞いてないし」

「……んだよ、人の親切を。こんな態度晃の前ではしねぇのにな」

「そっちの日頃の行いが悪いからでしょっ」
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