タイムトラベラー・キス
野々村がぽつぽつと思っていることを口にするの度に、罪悪感が生まれていく。

私は、野々村と未来の私がどのように付き合ってたかなんて分からない。初めて結ばれた夜のことも知らない。

二人が一緒に過ごした時間が積み重なって、この未来がある。

野々村はまっすぐに、27歳の私を想って大切にしてくれている。


その愛は、数時間一緒に過ごしただけで充分に感じることができた。


なのに、なぜ、27歳の私は……
過去に戻ろうなんて思ったのだろう。


「じゃ、ほんとにそろそろ寝ようか」

「うん、おやすみ……」


私と野々村は寄り添うようにして眠りについた。

野々村のそばで静かに目を閉じる。

あ、いい匂い。
昨日も感じたこの匂いは……野々村の匂いだったんだ。
< 63 / 276 >

この作品をシェア

pagetop