タイムトラベラー・キス

「入れ替わったまま長期間過ごすと、魂が今の身体に順応してしまう可能性がある。そうなる前に絶対、元通りにならなければならない」


「もし……入れ替わることが出来なかったらどうなるんだろう」


「そもそもこのタイムトラベルが初めての試みだから事例はないけれど……過去にいる27歳の雫は少しずつ未来の記憶をなくしていく。そしてまた10年間、新しい”記憶”を積み重ねていき、それが今のあんたの記憶に入れ替わっていくかもしれない。つまり、今とは違う都宮雫が生まれるということ」


「今とは違う、私……」


理子の言っていることはピンとはこなかったけれど、ただ、今の私が持っているすべてのものが消え、新しいものに変わっていくということに恐怖を覚えた。


「大丈夫。また元の時代に戻れるから。7月7日の18時にキスをすれば大丈夫だから」


理子の小さな手が、私の手にそっと重ねられた。





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