タイムトラベラー・キス
新幹線を降り、私鉄電車に乗り換え、一時間ほど経ってようやく地元の駅に到着した。

10年経っても変わらない、少し寂れた駅。
なんだか無性に懐かしくてほっとする。


駅からまっすぐまっすぐ歩き、右折してゆるやかな坂道を登っていく。葉桜が春の終わりを感じさせる。
歩きなれたこの道も10年前とほとんど変わらないけれど、所々に新しいマンションが建てられていた。


そして……坂道を登りきった先に見えたのは、“都宮”という表札が飾られた、小さな一軒家。ちょっとした庭も、クリーム色の壁も、なにも変わっていない。


玄関に近づくと、家の中からパタパタと足音が聞こえてきた。


「おかえりなさい」


お母さんは玄関の扉を開け、笑顔で私を迎え入れてくれた。


「ただいま、お母さん」


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