タイムトラベラー・キス

「雫の部屋はそのままにしてあるからね」


……お母さんの言葉の通り、2階にある私の部屋はいつでも使えるようにきれいに掃除されていた。

机の上にある小物や本棚など、高校生の私の部屋にあるものとは違っているけれど、根本的な部分は変わっていない。カーテンの色や、照明、テーブルやベッドの位置はそのままだ。

軽く荷ほどきをし、ワンピースをハンガーにかけてからベッドに横たわる。


明日はとうとう同窓会かぁ。みんなどんな大人になっているのだろう。
竜見くんは……やっぱりかっこいいんだろうな。

野々村は東京で元気にやっているかな。今日の夕食はどうするのだろう。
ちゃんと家に帰って、明日の用事には遅刻せずに行けるだろうか。


「……やだ、私お母さんみたいだな」


いつの間にか野々村の生活を支えていることが普通になっていた。

実家に帰ったら子供みたいにお母さんに甘えているのに。
っていうか、心はまだ子供なのに。


自分でも不思議で仕方がない。



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