タイムトラベラー・キス

「そういえばさ、野々村くんは今日来てないの?」

「ああ、今日は仕事の関係で用事があって来られなかったの」

「へぇ~」


さちちゃんだけじゃなくて、周りの誰もがにやにやして私を見ていた。
なんとなく居心地が悪くて、たいのカルパッチョをもぐもぐと食べた。

野々村と私のことは、どうやら有名な話らしい。
婚約して、二人で東京に住んでいることまで知られていた。
情報って怖い。



「でもまさか、野々村と雫ちゃんが結婚するなんて思わなかったよー。だってさ、野々村のこと嫌ってたじゃない?」


「そうそう、二人ってなぜかいつも喧嘩してたよね」


「それに、雫ちゃんってその時竜見くんに夢中だったしねー」


両隣が、私を差し置いて私の過去の話に夢中になっている。
私は口をはさむ間もない。
っていうか、私が竜見くんを好きなこともばれていたのか。
誰にも相談せずに竜見くんにアタックしていたけど、周りから見たらバレバレだったんだね。
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