タイムトラベラー・キス
さちちゃんたちはお酒を飲んでいい気分になってきたのか、私の過去にぐいぐい切り込んでくる。


「私さー、当時、雫ちゃんってすごいと思ってたんだよね!普通、学校のアイドルにまっすぐにアタックできないよー」


「あはは、怖いもの知らずだったんだよ、たぶん……」


「それで付き合っちゃうんだもんね。すごいよね。私だったら彼とは釣り合わないって思って一歩引いちゃうー」


悪気はないんだろうけど、なんだかバカにされているような気がして気分が悪い。
まぁ確かに、自分の見た目とか、釣り合うとか気にしたことはなかったけど。


「でもいつの間にか野々村くんと付き合っててさー、それにもびっくりした!いろいろもめたって噂はあったけどさ、何があったの?」


「いやあ、何があったっけな。っていうか、竜見くんに聞こえるかもしれないし、この話は……」


「大丈夫、竜見くんはまだ来ていないみたいだから」


さらっと話をかわすこともできず、両隣の女子だけではなく、向かいの男子たちまで私に注目していた。
あと、竜見くんがまだ来ていないことも今知ったよ。
通りで見つけられないわけだ。
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