タイムトラベラー・キス
「え、えっとぉ、竜見くんの近況が聞きたいな」

「じゃあ、空いている席に行こっか」


私の周りの女子たちはあっというまに竜見くんに連れて行かれた。周りに人がいなくなり、急にできた静けさが心地よい。正直、助かった……。

竜見くんは私から少し離れた席で、女の子たちと楽しそうに話している。
社会人になっても栗色の髪は変わらずに、シルバーのリングピアスがきらりと光っていた。


……違うテーブルに座っていた人たちが、入れ替わり私の隣にやってきた。
さっきみたいに野々村や竜見くんの話になることはなかったけれど、ところどころ分からない話もあって、笑ってごまかしながら楽しい時間を過ごした。

あっという間に一次会も終わりに近づき、幹事が「二次会に行く人は移動しましょう」と声をかけている。


様子を見ている限り、ほとんどの人は二次会に行くようだ。
でも私は、分からない話をされると困るので一次会で帰ろうと決めていた。
< 97 / 276 >

この作品をシェア

pagetop