タイムトラベラー・キス

「おいおい、都宮は雪ちゃんの彼女なんだからナンパしたらダメだよ」
「お前ら昔付き合ってたんだろ、まずくね?」


周りの男子たちの声を聞いて、やはりこれはよくないことなのだと認識する。
野々村は私のことを信じてくれている。そんな彼を不安にさせたり、傷つけることをしてはいけないよね。


「私は一人で……」

竜見くんの提案を断ろうしたが、彼の発言が覆いかぶさってかき消された。


「みんな何言ってんの。雪ちゃんの大事な婚約者だから、一人で帰らせたくないんだよ。元カノかもしれないけど、もう10年前の話だよ?やましいことなんて何もないし、手を出すはずもないよ。それより、みんな雫ちゃんに独り夜道を帰らせる気?」


「確かに、一人で帰らせたら危険だよな。ごめん、俺たちが悪かった。送ってあげたほうがいいよ」


男子たちは一斉に意見が変わり、また私の心も動かされていく。
”雪ちゃんの大事な婚約者”っていう言葉が一番嬉しかった。
二人の関係がどうなっているか分からなかったけど、この言葉を聞いて、二人の友情はまだ続いているんだと確信した。


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