知られてはいけない
それでも、こんな口べたな言葉でも、彼方は嬉しそうに言った





彼方「・・・ありがとう」





・・・・




それからしばらく壁に寄りかかりながら話していたんだけど、見回っていたお義兄さんに見つかってしまい





ちゃんと練習しろっと怒られてしまった




私に対してもいつものような優しい感じじゃなくて、不良っぽい話し方だから、慣れなくてちょっと怖い




ごめん嘘ついた。結構怖い。半端じゃない・・・




彼方「はぁ、じゃあそろそろやろうか」



花「・・・ええ」




はあ、結局踊らないとなのか・・・




彼方「秋山さんって踊れるんだったよね?」




花「そんな事言ってないわよ?」




彼方「え!?」




”さあ、ね?”って言ったわよね私




彼方「じゃあ踊れないの?」




花「・・・えっと。踊れると思うけど、だいぶ前にやってたから曖昧、かな」




・・・・これでいいでしょ




彼方「ああ、ね。なら思い出すようにゆっくりやろうか」




花「・・・・そうね」




罪悪感が・・・




丁度BGMで流れていた曲が終わったので、次の曲で踊れるように手を組んで準備をする




なんの曲だろうか・・・




でも今まで流れていた曲は全部、社交ダンスに良く使われる曲だったから、次も一度は踊ったことのある曲だと思うけど・・・




曲が流れ始める




・・・・あ、知ってる曲だ




彼方も知っているようで、曲を理解した途端ステップを踏み始めた




それに合わせて私も踊り出す




社交ダンスは、二人で一つ




二人の息が合ってないと旨くはならない




男性がエスコートして女性が補佐する




しかし、これは練習。それに、別に美しさを競う大会でもない




そう思って周りを見れば、先輩に教えて貰いながら
皆必死に練習していた



大学生といえばもう大人だから、異性とほぼ抱き合うかたちの社交ダンスに、少し抵抗があるみたいだけど




まだステップを覚えたり確認したりしてるから、まだ私達のように曲に合わせて踊っている者は居ない




冷斗も踊れる筈だけど、どこに居るんだろう・・・




あ、いけないいけない。真剣にやらないと




もう曲が後半になったので、少しふらふらとさせていた体を立て直し、いつも通り踊った




彼方「全然踊れるじゃん。思い出したの?」




花「うん、思い出してきた。私ダンス好きだったんだ」




踊りながらの会話




少し息が上がるけど、彼方は依然として平然としている



しっかりエスコートしてくれてるし、上手だ




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