殺戮都市~バベル~
俺がそう尋ねると、恵梨香さんは言葉を詰まらせて、小さく唸った。


まさか、あの二人をあっさりと倒したやつがいるとか……そいつが連合軍に対して敵対している……なんて話だったらどうしようと思っていたけど。


恵梨香さんの話は、そうではなかった。


「いや、生き残った真冬の話だと、そうではないようだ。突如地面を破って現れた龍のような手に、二人は殺られたらしい」


龍のような……手?


ポーンもナイトもルークも、狼のような頭部を持っていた。


新しい化け物が……ビショップが現れたとしても、龍って何なんだよ。


「それは……ビショップですか?」


「いや、私も見た事がないからわからないが……人ではないモノがいるとなると、恐らくそうだろうな。今の神谷なら、ルークに殺られるはずがない。そう考えると……」


バベルの塔に近付く。


それが現実味を帯れば帯びるほど、化け物達の抵抗も激しくなって行くような気がする。


「考えていても仕方ないですね。まずは南軍の混乱をどうにかしないと。そしてバベルの塔……ですね。いよいよ」


「そうだな。やっと……ここまで来れたという感じか」


俺がバベルの塔に行くと決めてから、既に100日以上。


恵梨香さんにしてみれば、とても長かったに違いない。
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