殺戮都市~バベル~
厳しい優しさ
「う……うぅ……」
首の痛みと、何が起こったのかが理解出来ない中で、俺は唸り声を上げて目を覚ました。
身体を起こすとそこはベンチの上で……背負っていた三笠の姿はどこにもない。
「随分ぐっすりと寝ていたな。一時間は経ったぞ?」
隣で脚を組み、膝に手を置いた死神が……俺に声を掛けたのだ。
「み、三笠は……あんた!三笠をどうした!!」
慌ててベンチから離れて、微かな望みに賭けるように、俺は尋ねた。
「……少年Bの事はもう忘れろ。いや、もうここであった事を忘れるんだ。良いな?」
その言葉は、俺の身体中から血の気を引かせる十分な物だった。
この街で出会って、三笠と分かり合えたなんて言わない。
殺してくれと言われたのに、俺が助けようとしただけ。
新崎さん……三笠……。
近くにいても、命を助ける事も出来やしない。
怒りと悲しみの連続に、俺は何をどうすれば良いかわからなくて……日本刀を抜いた。
「……それがどう言う意味かわかっているのか?それとも、わからぬまま刀を抜いたか?どちらでも良い。どのくらい腕を上げたか、見てやろう」
立ち上がり、トンファーを抜いた死神が、俺にゆっくりと歩み寄った。