殺戮都市~バベル~
「沼沢君!」


二階建ての事務所から出て来た、奈央さんと里奈さん、そして三葉さん。


沼沢の名を呼び、慌てて階段を駆け下りて来る。


運が……良かった。


恵梨香さんのように、相討ち覚悟で飛び込んで、鎖分銅の直撃を受けた直後に瞬間回復をする覚悟もしてたけど……。


最後の最後で、勝ちを確信した沼沢の油断が、俺に勝利を引き寄せたんだ。


もしも日本刀に鞘がなかったら。


もしも鞘が黒くなかったら。


間違いなく沼沢に殺されていた。


二毛と梅原、城井にも助けられた。


俺一人では、既に死んでいたはずだから。


チラリと梅原の方を見て、小さく頷いた俺は、二毛に視線を移した。


相当ダメージを受けたのか、ピクリとも動かずに、大の字で寝ている。


そんな中、奈央さんが倒れた沼沢に駆け寄って、心配そうな眼差しで見詰めたのだ。


「沼沢君……どうして真治君と戦ったのよ。あれだけ無駄な戦いはしないって言ったのに」


捕らえられている間に、どんな話をしていたのかはわからない。


だけど……奈央さんのこの態度から察するに、沼沢に乱暴な事をされたわけじゃないというのは理解出来た。
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