殺戮都市~バベル~
雪子さんは、俺と沼沢に殺し合いをさせる為にそんな条件を付けたのか。


と、なると……雪子さんの言動は、全部演技だったわけだ。


まんまと騙されたよ。


フウッと溜め息を吐いた俺の顔を、里奈さんが不安そうに覗き込む。


「ご、ごめんね。騙すつもりはなかったんだけど……真治を強くするには、これが一番だって雪子さんが言ってた。純粋に、強い敵との勝負がね」


その言葉を聞いて、恵梨香さんと話をする雪子さんに目を向けた。


まだ二人で、興奮気味に話をしているけど……確かにそうかもしれない。


恵梨香さんがいれば……吹雪さんがいれば、沼沢に勝てるかもしれないと、西軍に来るまで考えていたのは事実。


強い力にすり寄って、自分の力量以上の事でさえ何とかなりそうな気がしていた。


当然の事ながら、ここにいる人達と本気で殺し合うなんて俺には無理だ。


だからこそ、沼沢との戦いは、俺にとって必要な試練だったのかな。


「……よし、それで良いだろう!少年、ちょっとこっちに来い!話がある!」


雪子さんと話していた恵梨香さんが俺を呼んだ。


まだ話が続くかもしれないと、里奈さんを見てみると……。


里奈さんは、小さく頷いた。
< 367 / 1,451 >

この作品をシェア

pagetop