殺戮都市~バベル~
沼沢が味方に……。


奈央さんがいれば、その可能性もあるのか。


里奈さんの話から、沼沢は決して悪いやつじゃないってわかった。


俺が奈央さんを守るか、沼沢が奈央さんを守るか……ただそれだけで、味方になると言うなら、どちらかなんて事に拘わる必要がなくなる。


淡い恋心……奈央さんへの感情は、そうだと思っていたけど、吹雪さんや恵梨香さんと行動していてわかった。


多分、俺の気持ちはそれとは少し違って。


優しくしてくれるお姉さんが出来たみたいで、嬉しかっただけなんだろうな。


「私はどっちでも良いんだがな。まあ、行くと言うなら早く行くぞ。長居すると……足が鈍るからな」


ヘルメットを拾い上げ、髪を掻き上げてそれを被ろうとする。


「ちょっと待ちなよ。恵梨香ちゃん、その格好で動き回るつもり?『死神』の名前が一人歩きしてて、警戒されるんだからさ、違う服を着た方が良いよ?」


黒いライダースーツにドクロのヘルメット。


黒井に空けられた腹部の穴から、白い肌が顔を覗かせている。


「む?そうか?別にこれでも良いんだが……適当な店に入って見繕うとするかな」


恵梨香さんはもう、ここを出る気満々だ。


今からどこに行くのかもわからないまま、俺はソファから立ち上がった。
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