殺戮都市~バベル~
「じゃあ、頑張っておいでよ。吹雪と奈央ちゃんの事は私に任せときな」


「ふん、心配などしていない。そっちこそ、今よりももっと強くなるんだな」


出発の準備が整い、部屋の外に出た俺達を、皆が見送ってくれる。


その中で、奈央さんが前に出て俺に近付いた。


「真治君、来てくれてありがとうね」


来てくれて……か。


助けてくれてじゃないんだな。


それはそうか。


俺と一緒にいた時間よりも、沼沢と一緒にいた時間の方が長い。


その間に、どういう心境の変化があったかなんてわからないけど……俺よりも、沼沢に守られているという感覚が強くなったであろうという事は容易に想像出来る。


だけどわかってほしい。


俺にとって、奈央さんは変わらず大切な仲間なんだよ。


「……あの、奈央さん。俺、言わなきゃならない事があるんですけど」


伝えなければならない。


でも、なかなか言い出せなかった事。


「言わなくても……良いよ。一馬の事でしょ?PBMのフレンドリストから名前が消えたから、そうじゃないかなって思ってたけど……その事だよね?」


「あ、は、はい……」


何としてでも生き延びようと、俺を池田に差し出した。


そして、俺を庇って死んだ。


面倒を見ていた明美さんによって殺された……なんて、とても言えなかった。
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