殺戮都市~バベル~
恵梨香さんが走り出して、俺もその後に続いた。


最初の一歩でわかる、俺との力の差が。


中央部に足を踏み入れたのだろう。


ポーン達がこちらに気付き、一斉に顔を向けた。


当然、ナイトもその顔をこちらに向ける。


そして、ポーンを押し退けてナイトが前に出たのだ。


「来るぞ!一撃に備えろ!」


「はいっ!」


もうすでに、5メートルほど先にいる恵梨香さんの声に返事をした時だった。











ナイトが……50メートルほど離れた場所から、猛スピードで駆け寄って来たのだ。


あまりにも速い移動。


まだ光の壁の切れ目にも到達していないのに!


ナイトは槍を構えて、恵梨香さん目掛けてそれを突き出したのだ。


「くっ!なめるな!!」


だが、さすがは恵梨香さんと言った所か。


6メートル近くありそうな巨体から繰り出された一撃を、飛び上がって回避して、その腕の上を走って後方へと抜けたのだ。


回避がそのまま逃走に繋がっている。


戦うだけが戦闘じゃない。


それを教えてくれるような、迷いのない逃げっぷりだ。


一撃で力量を見ると言っていた恵梨香さんが……それを選んだという事は、まずいと判断したのだろう。
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