殺戮都市~バベル~
つ、強い……。


ポーンとは比べ物にならない強さだ。


もしかすると、沼沢でさえ勝てないかもしれない。


「少年!逃げろ!」


恵梨香さんはそう言うけど……とても逃げ切れるとは思えない。


気付いたら、何か血が垂れているけど……なんだこれ。


どこから流れているかわからない。


左耳がジンジン痛むな。


なんだろうと耳に手を当ててみると……ヌルリとしたものが手に付いたのがわかる。


耳が……欠けてる!?


嘘だろ?ガードしたつもりだったのに、耳を持ってかれたのかよ!


東軍に辿り着く前に、こいつに殺されてしまうんじゃないのか?


「はは……本当に化け物だな」


再び槍が、俺に向けられた。


ポーン達ですら、まだここまで辿り付いていないほど、僅かな時間に起こった攻防。


膝が笑って、上手く動く事が出来ない状態で、俺は槍の先端を見詰めて日本刀を構えるしかなかった。


沼沢との戦いに勝てたのに、こんな化け物相手にやられてしまうのかよ……。


「グルルルルル」


顔も見えない兜の中で、ナイトの声が響く。


もうダメかと思ったその時。











ガンッ!と金属音が鳴り響いて、ナイトの頭部が横を向いたのだ。
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