殺戮都市~バベル~
「動け!早く行くんだ少年!!」


その音を出したのは恵梨香さん。


ナイトの身体を駆け上がって、大きな兜にトンファーの一撃を食らわせたのだ。


その強い衝撃で、ナイトが一瞬動きを止めた。


二人でならなんとかなるとか、俺は何て甘い事を考えていたんだ。


ポーンを一撃で仕留める恵梨香さんでさえ、ナイトの気を逸らすのが精一杯。


俺なんかでは、相手になるはずがない!


震える足に力を込めて、俺は光の壁に向かって走り出した。


何度も転びそうになりながら、必死に。


光の壁の切れ目が近付く。


眼前にはポーンの群れ、背後にはナイト。


進んでも退いても地獄なこの状況で、俺は足を止める事はなかった。


迷って動きが止まれば、その時点で詰んでしまう。


まだ、南軍に逃げ込むという選択肢は残っているから。


「遅いぞ少年!もっと速く、速く逃げろ!!」


ナイトに一撃を食らわせた恵梨香さんが、早くも俺の横に並んで切れ目を目指して走っている。


そ、そんな事言ったって……これが精一杯なのに!


恵梨香さんにさらに引き離されて、俺に焦りが生じる。


そんな時、背後から……地面をドラムのように叩くような音が聞こえた。
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