殺戮都市~バベル~
ま、まさかこの音は!


速度を落とさないように、ほんの一瞬だけ振り返った俺の目に、高速で迫るナイトの姿。


「ひ、ひいっ!」


あまりの迫力と恐怖に、思わず声が漏れた。


もうすぐ切れ目に辿り着くのに、とても間に合うとは思えない!


恵梨香さんは既に南軍に入った。


後は俺だけ!


間に合うのかよ!


「左に跳べ!」


必死に走る俺の耳に届いた恵梨香さんの声。


何も考える事もなく、俺はその声の通りに左側に跳んだ。


瞬間、俺がいた場所の地面が激しく隆起した。


「あ、危ねえ!」


槍が地面に突き刺さり、それを抜くまでに生じた僅かな隙。


こうなったら、もったいないとか言ってられない!


少しでも日本刀のレベルを上げて、俺自身の動きが速くなればと、俺は左手でスティレットを引き抜いた。


溶け込ませるようなイメージで、それを日本刀に合わせる。


スティレットは消え、日本刀のレベルが上がったのだろう。


ほんの少しだけ、身体が軽くなったような気がした。


ナイトが槍を引き抜くまでに、何とか光の壁の切れ目に辿り着いた。


だけど、目の前にはポーンの群れが迫っていた。
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