殺戮都市~バベル~
「負傷して、少しはマシになったか?だが、今更どうなろうと変わらんがな」


相変わらず落ち着いた様子で、罠に掛かった獲物を仕留めるかのように、短刀を持って俺に近付く。


だけど……動きは見える。


極限まで研ぎ澄まされた感覚が、次に津堂がどう動こうとしているのか予測する。


パッと見はわからないけれど、床を踏む足に力が込められた。


見てからでは間に合わない!


一歩踏み込まれる前にと、津堂の動きを先読みして日本刀を振るう。


それが、津堂が飛び込んだタイミングと上手い具合いに重なって……。












津堂を斬り払った……と、思ったのに。


俺の攻撃は空を斬り、津堂の服に触れる事もなかった。


ほんの数センチ。


日本刀の間合いの外で、俺を見下ろすようにたたずむ津堂の短刀が……静かに俺に伸びた。


先程刺した場所への的確な攻撃は、俺はたまらず崩れ落ちる事しか出来なかった。


「ああああああああああああああああああああっ!!」


グリグリと短刀をねじり、傷口を広げて行く。


「結局この程度か。あの女もそうだが、こんな実力でバベルの塔に行こうなどと思わない事だ。お前達が行けるくらいなら、俺達が既に行っている」
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