殺戮都市~バベル~
渇望と絶望と
……気持ち悪い。


身体の中がぐちゃぐちゃに掻き回されているかのような感覚に陥って、嘔吐してしまいそうだ。


よりによって、出会ってはならない四人のうち、二人に出会ってしまうなんて。


名前を聞いたわけじゃないけど、文字通り日本刀ごと俺を叩き潰した香月えり。


俺の攻撃が当たらないどころか、動きが俺の理解の外にいた津堂燕飛。


今になって、恵梨香さんがなぜ絶対に出会ってはならないと言ったのか、その意味がわかった。


俺が目を覚ましたのは……あれから何日経ってからなのだろうか。


吹雪さんと見付けた、畳の部屋の仮眠室で目を覚ました俺は、外から聞こえる雨音に耳を傾けた。


「洗浄日……か」


当然の事ながら、この部屋には誰もいない。


恵梨香さんを助けられなかった悔しさと、あの二人に感じた、どうしようもない絶望に打ちひしがれて……溜め息を吐く事しか出来なかった。


今の俺では、とてもあの二人には敵わない。


だけど、だからと言って諦めたら、恵梨香さんは解放されない。


いっそ、恵梨香さんを殺してくれた方が楽なんだろうけど……それはつまり、解放するのと同じ意味だ。


津堂の口ぶりからすると、殺さずにずっと捕らえておくつもりだろう。
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