殺戮都市~バベル~
割り込んだ真冬をジッと見て……黒井がポリポリと頭を掻く。


「俺達を騙して罠にかけようって言うんじゃないなら良いんだけどさ。それよりあんた……男だろ。見た目は女だけどさ」


急に何を言い出すんだ黒井は!


男って……こんな綺麗な人が男なわけが……。


「う!ち、違うし!もう女だし!」


もうって……つまり、元は男だったってわけか!?


はぁ……まだ17年しか生きていないけど、俺の周りにはこういう人がいなかったから、不思議な感覚だな。


「ま、それはどっちでも良いんだけど。で?津堂を殺したいって理由は?それを言えば、信じてやるけど」


協力してもらうのに、やたら高圧的な黒井。


これじゃあ、どっちが協力してもらうのかわからないな。


だけど、こういう駆け引きは黒井に任せておこう。


「……私は、順一を助けたいだけ。騙されてるとわかってて、津堂をどうする事も出来ないから」


小さく囁くような声。


だけど、不思議と力強さを感じる言葉。


黒井はどう思うかわからないけど……助けたいと思う気持ちに嘘はないと信じたい。


俺も、恵梨香さんを助ける為にここまで来たのだから。
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