殺戮都市~バベル~
「じゃあ……私を抱き締めて一緒に寝てよ。真治がいなくなってから、亜美ちゃんが一人では寝られなかったんだから」


それと優を抱いて寝るのと、何の関係があるんだ?


まさか、一人じゃ眠れないなんて言わないだろうな。


「だ、だから?」


「だーかーらー、私が亜美ちゃんを抱いて寝たみたいに、真治が私を抱いて寝て。良いでしょ?それくらい」


この街にいる女性は、皆こんなに積極的と言うか……性に鈍感なのかな。


恵梨香さんも吹雪さんも、裸になるし、奈央さんだってそうだった。


それと比べたら、抱いて寝るくらい大した事はない……のか?


もう、何が良くて何が悪いのかさっぱりわからないよ。


「わ、わかった」


俺が、優に言われるがままに頷くと、フフッと微笑んで寝転がると、俺と背もたれの間に割り込んだ。


「ほら、ちゃんと抱き締めてくれないと、真治が落ちちゃうよ?」


「あ、う、うん……」


恐る恐る優の首の下に腕を入れて、そっと抱き締めた。


俺……一体何をしているんだろう?


皆がデパートを調べているってのに。


好きな人がいるってのに。


皆に悪いなと思いながらも、俺自身、人を抱き締める安心感というのを感じていた。
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