殺戮都市~バベル~
「な、奈央さん!?」


腹部に手を当て、刺された事にようやく気付いた様子で、溢れ出る血を見る奈央さん。


「殺しやしねえ。なかなか良い女だからな。この後ゆっくり楽しませてもらうつもりだからよ。てなわけでお前は邪魔だ。ぶっ殺す」


死ななければ、ダメージは回復する……。


奈央さんの傷も、しばらくすれば治るだろう。


それまでに俺を殺すって事か。


それにしても、路地に誘い込んで一人ずつ殺すって作戦が完全に裏目に出たな。


こんなに強いやつの武器が槍だなんて。


細い道で、俺の接近を拒む槍……。


大きく動いて切っ先から逃れる事も出来そうにない。


「ヘイヘイ!どうした、掛かって来ないのかよ?必死に抵抗して見せろよ!」


山口は、遊んでいるかのように、俺の日本刀に槍の切っ先をぶつける。


カンカンと甲高い音が響き、俺はどうすれば良いかわからずにジリジリと後退するだけ。


どうする……どうする!!


今回は頼れる人がいない。


俺一人でこの窮地を切り抜けないと。


その思いで、山口の動きを見ていると……日本刀を弾いた時、その余裕からか、切っ先を俺に向けるまでに僅かに隙がある事に気付いたのだ。
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