殺戮都市~バベル~
今の一撃でわかった。


こいつは強くて、俺じゃあ勝てない。


運が良いのは何度も続かないって事か。


胸の激しい痛みが全身を駆け巡る。


いくら回復が早いからって、まともに戦えるような状態じゃない。


「さてさて、ガキにはここで死んでもらうとして……女はこれからお楽しみだな。くぅぅ!久々の当たりだぜ!」


くそっ……弱い者に与えられる物なんて何もない。


その言葉の意味が、今なら痛いほどわかる。


逃げてばかりの俺が、強くなりたいと初めて思った瞬間だった。


「じゃあ、ソウルと金を頂くとするかな。安心しな、女は俺が責任を持って……」


と、山口の声がそこまで聞こえた時だった。


そこから、声が聞こえなくなって。


数秒後、俺の近くに、ゴツッと何か重い物が落ちる音が聞こえたのだ。


……な、なんだ?


俺はまだ死んでない。


山口は俺を殺すんじゃないのか?


そう思い、なんとか顔を上げてみると……。


「!?」













そこには、俺を見詰めて地面に転がる、山口の頭部があったのだ。


何が起こってこんな事になっているのか、さっぱりわからないけど……それを確認出来るほど、俺の傷は浅い物ではなかった。
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