眠りにつくその日まで
ゴホッ、と隣の席に座っているサラリーマンが咳をした。
如何にもうつりそうな、嫌な咳だった。
内心顔をしかめていると、斜め向かいの席のおばさんもゲホゲホと咳をした。
こんな季節だと言うのに、風邪が流行っているのだろうか。
咳が出る風邪なら、マスクをしてくれれば良いのになぁ、と思っているうちに、高校の最寄駅に着いた。
ドアが開くと、我先にとドアの近くに立っていた細身のおじさんが降りていった。
ローカル線だが、降りる人はそれなりに多い。
私は同じ制服の子達に紛れながら、黒猫の柄の定期入れをタッチして改札を抜けた。