眠りにつくその日まで
『今日も1日雨の予報です。肌寒く感じられると思うので、カーディガンなど羽織るものがあるといいかも知れません。』
『風邪も流行ってますしね。皆さん体調には注意してください。』
朝のニュース番組が、ありきたりなこと言う。
私はそれを見ながら、味噌汁をすすった。
お豆腐とネギのお味噌汁。私はお母さんの作るお味噌汁が大好きだ。
優しい味に、朝の体にエンジンがかかるような気がしてくる。
バサ、とお父さんは新聞を広げた。
いつも新聞を読んでいて遅刻しそうになるんだから、早く出ればいいのにといつも思う。
朝ご飯をあまり食べたくない派だという夏子はジャムトーストをかじっている。
お母さんがお茶を持って来てイスに座った。
そして、ゴホ、と咳をした。
「お母さん、風邪?」
夏子が何気なく聞く。
咳をしたのが自分でも意外だったような顔で
「なんでしょうね。」
とお母さんは笑った。
「引き初めが肝心だから、早く薬飲みなさい。」
お父さんが厳しく言う。
もちろん、心配しての事だとみんな分かっている。
「のど飴もあるよ。」
市販の薬を取りに席を立ったお母さんに言うと
「私は甘いのがいいわぁ。」
と、いたずらに笑った。