眠りにつくその日まで





電車に乗ると、ここのところ毎日思う。





咳をしている人が、日に日に増えていっている。




あの日は、友達の美羽、健太くん、そしてティッティーが咳をしてたから気になっただけだと思っていた。





ところが、今日なんかどうだろう。



2人に1人は咳をしている。



私が乗る、たった二駅、10分間。



その間に、2人に1人、と思うほどだ。


…ちょっと、流行りすぎじゃないかな。




毎日、マスクを忘れたことを後悔しながら、黒猫のパスケースをタッチして改札を抜ける。



いつもの自販機のところで、美羽はマスクをして待っていた。



「おはよ。」


マスクを通して少し曇った声。


あの日から美羽はずっと咳をしている。

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