眠りにつくその日まで
私は玄関を開ける勇気が出ないで、ただドアの前に立ち尽くしていた。



ブロロロとバイクの音がしたと思うと、新聞屋さんが夕刊をポストに突っこんで走り去って行った。


突然、ドアが開いて私はビクッと飛び上がってしまった。



バイクの音で、美羽のお父さんが玄関を開けて出てきたのだった。


私は気まずくてモジモジしていたけど、美羽のお父さんは私に気づくと

「あぁ、春子ちゃん。来てくれたんだね。ごめん、美羽はまだ帰ってきてないんだ。」


力なくそう言った。




「え?」


私は耳を疑う。


まだ帰ってきてない?


その言い方は、まるで美羽が生きているかのようで、私は淡い期待を抱いた。


しかしそれはすぐ打ち消された。


「検死?ってやつかな。病院なんだ。ごめんね。せっかく来てくれたのに。」
< 41 / 53 >

この作品をシェア

pagetop