眠りにつくその日まで
思わず溜息をついた時、

「春子。」

と、後ろから低い、セクシーな声がした。


憂鬱な気分から一気に心臓が跳ね上がって、余計に苦しくなる。


後ろを振り向いて見る。


その人は、もちろん、健太くんだった。


ビニール傘をさして、少し日に焼けた肌、白目が綺麗な瞳。


その瞳がこちらを真っ直ぐに捉えている。

一瞬、世界の音が止まってしまったようだった。
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