眠りにつくその日まで
しかしそれは一瞬で、健太くんは笑うでもなく
「おはよう。」
と、それだけ言った。
おはようと少しどもりながら返すと、こちらに歩いてきて、一緒に行こうとするのでもなく通り過ぎるようなスピードで歩いていってしまうものだから、私は慌ててそれについて行った。
そして健太くんはそれを嫌がるでも喜ぶでもない様子で
「美雨んち、行ったの?」
とぶしつけに聞いてきた。
どんな気持ちでそれを言っているのか私には分からなかったけど、
「行ったけど、検死?で会えなかった。」
そうやって、普通に答えた。
健太くんはそっか、とだけ言った。
下駄箱に着くと、なんとなく一緒に教室に行ってはいけないような気がして、私はわざとゆっくり靴をしまって、時間を掛けて上履きに履き替えた。
案の定、健太くんは私を待ちもせず、振り向きもせず教室に向かっていった。
私はそれを見て、何故か少しだけホッとした。